ここは次界政務庁、第1会議室である。週1回、行政首脳陣が集まり、一週間の成果と次週の予定を報告・確認する会議を行っている。
参加メンバーは、次界政務庁八部署の部長である聖Vヤマトら8人と、秘書室・資金室・監査室の長を兼任する魔魂プタゴラトン、それから、行政代表者アンドロココ・シヴァマリアの計11名である。
ただし、今日はシヴァマリアが次動ネブラに視察に行っているため、会議室には男性ばかり10名という状況であった。
「それでは皆さん、他に連絡事項はございますかな?」
会議の司会進行を努めている魔魂プタゴラトンが、各メンバーに連絡漏れはないか促した。
魔魂プタゴラトンの担当する三室は、事務作業中心の部署であり、所属人数も少ないので、この定例週会議で報告することはあまりないのだが、アンドロココ・シヴァマリアらと共に全体像を把握し、必要があれば助言するため、司会進行役として参加しているのである。
「あ、すみません。仕事以外の話で恐縮ですが・・・」
聖Y牛若が挙手してメンバーを見渡し、発言を続けた。
「丁度良いので、この場で連絡致します。この後、第三会議室にポンプ大帝が花を届けてくれることになっていますので、購入希望の方は18時に集まってください。」
今日は2月14日、愛の日である。名前のとおり、古くから愛の告白をする日と言い伝えられている。
元々、天聖界では女性のイベントで、告白する時にチョコレートを贈る習慣があった。また、天魔界では逆に、男性が女性に愛をささやく日であり、贈り物としては花を選ぶというものであった。
聖魔和合が成立してからは、両方の慣わしを取り入れ、天魔を問わず、男性は花を、女性はチョコレートを贈り、愛の告白をする日ということで次界全土に広まっている。
イベントの中心となるのはもちろん若者であるが、この時期の菓子屋と花屋は大盛況である。
売り切れてしまわないよう、あらかじめ予約を入れたり、女性の場合は、自分で材料を揃えてチョコレート菓子を作ったりする。
「牛若がポンプに頼んでおいてくれたおかげで、本当に助かるよ。」
「分ってはいても、なかなか予約して受け取りに行くのは大変だからね・・・。」
聖Vヤマトの台詞に、聖Rピーターが相槌を打った。
若神子の頃はいざ知らず、聖魔和合の立役者となった今、彼らは注目の的なのである。
イベントの内容がプライベートに関わることもあり、聖Y牛若の配慮に対して、皆は恩に着るといった風であった。
「次界芸能新聞なんかの一面に載ったりしないよう、皆さん気をつけてくださいね。」
「・・・アハハ・・・気をつけますぅ~・・・」
アンドロココは苦笑しながら皆に注意したところ、聖Vヤマトが小さくなりながら答えたので、会議室に爆笑が起こった。
昨年、聖Vヤマトはクロススターとの痴話喧嘩をスクープされてしまったのである。
次界芸能新聞は、都を中心に購読されており、時折ゴシップも載せることから人気がある。
「ロココ殿を含め、皆それぞれ気をつけて貰うとして、それでは、他になければ会議は解散ということで宜しいかな?」
笑いが収まったところで魔魂プタゴラトンが皆に釘を刺し、会議は解散となった。
「プタゴラトン殿も、宜しかったらいらっしゃいませんか?」
「おっさんも贈る相手くらい居るんだろ?花、相当持って来るって話だぜ。」
会議室から退出する際、聖Y牛若と聖B一本釣は近くに居た魔魂プタゴラトンに声をかけた。
「私は自宅に庭園があるので結構。小僧、生意気な口を利きおって。」
魔魂プタゴラトンはフンと鼻で笑いこう言い放った後、聖B一本釣を小突くまねをしてその場を後にした。
残された聖Y牛若と聖B一本釣は驚いて顔を見合わせた。
「・・・否定しなかったな。」
「・・・ですね。」
⇒(2)へ続く