18時になったところで、第三会議室に続々とメンバーが集まってきた。
「みんな、久しぶり~。今日はいい花持ってきたから是非選んでいってよ!ラッピングはおまけしちゃうよ~。」
「おっすげえな。ポンプ、店の花全部もってきたのかよ?」
「わあ~どれにしようか、オレ迷っちゃうなあ~。」
「ラッピングも色々選べるのだろう?色見本なども見せてもらえると助かるな。」
この会議室はそれほど大きくないのだが、半分が花で埋まっている。
ポンプ大帝はせっせと花を並べ、聖O男ジャック、聖Iアリババは花の量に驚き、聖Gフッドは既に花を決めたようである。
「じゃ、私はこれにするよ。ラッピングはこの薄い水色で、リボンはこの紫にしてくれるか?」
「はいはい、毎度あり~。じゃ、ちょっと待ってね。」
聖Gフッドの会計とラッピングが完了したところで、聖Y牛若が聖Rピーターと連れ立ってやってきた。
「ポンプ、どうですか?搬入は問題ありませんでした?」
花屋を開いているポンプ大帝と親しい上、自身も華道を嗜むことから、聖Y牛若は毎年出張花屋企画に協力しているのである。
「あ、牛若!色々手配しといてくれてありがとう~。搬入はスムーズスムーズ、問題ないよ。牛若ももちろんウチの買ってくれるんでしょ?牛若の選びそうな花も仕入れてあるから。」
「ははは・・・では、お言葉に甘えて。」
「僕はどうしようかなあ、これにしようかな。ねえポンプ、ラッピングは自分でしたいんだけど、いいかな?材料だけもらえるとありがたいんだけど・・・。」
「毎度あり!今日は特別だしもちろんいいよ、ここの材料好きなだけ使って~。」
「助かるよ、ありがとう。」
色々こだわりがあるのだろう、聖Rピーターは、バランスよくラッピングする為にハサミを手に持ち真剣な表情だ。
その横で聖O男ジャック、聖Iアリババは去年は何を選んだかという話をしていた。二人ともまだ迷っているらしい。聖Y牛若は一人真剣に吟味している。
「どう、決まった?あ、そうそう、本命以外に義理用もちょっとはあるよ。」
義理用というのは、最近需要が増えている、数種類の花のミニブーケのことである。
花が一種類のみ場合は愛の告白、数種類の場合は敬愛しているという意味をもつのである。女性の場合は、チョコレートは愛の告白、それ以外の菓子は敬愛の意を表すのである。
意味合いが異なることから、男女とも、本命は当日に、義理は翌日に渡すというのが暗黙の了解となっている。
「ごめーん、遅くなった!」
「すまん、遅れた。」
「すみません、お待たせしました。」
18時15分を過ぎた頃、異口同音に、聖Vヤマト、聖B一本釣、大照光が入室してきた。
「声をかけたメンバーはこれで全員でしょうか?あ、照光、ロココ様はどうされました?」
聖Y牛若は答えを予想しつつ尋ねた。会議後、大照光はアンドロココに報告をしていたからだ。
「ああ、ロココ様はもうお帰りになったよ。ずいぶん慌てたご様子だった。」
大照光の想定通りの答えに、会議室内の全員から苦笑がもれた。去年も確かそうだった、と聖Rピーター、聖O男ジャック、聖Gフッド、聖Iアリババが話し始めた。
一方、後から来た聖Vヤマト、聖B一本釣は、ポンプ大帝と今年の売れ行きの話で盛り上がっている。
「えーと、では、全員揃ったところで先にマリア様の花束を決めてしまいましょうか?」
30分程ああだこうだと騒いだ後、マリア用の花束と、各自想い人への花束を用意することが出来た。
⇒(3)へ続く