がちゃがちゃ、バタン
(あれ?マリアがもう帰ってきてる・・・。)
「ただいま~。」
玄関のドアを開けると、リビングの明かりがついていた。ロココはマスクだけを外し、コートも脱がぬままリビングのドアを開け、そこに居るだろうマリアに声をかけた。マリアの次動ネブラ視察は昨日からだったので、たった1日顔を合わせていないだけだった。しかし、今日は朝早くに出勤し、色々警戒しながら帰宅したので、ロココはマリアの顔を見て、ああ帰ってきた、と安心した自分を感じた。
「おう、おかえり。もうすぐ食事ができる。もう少し待ってろ。・・・それにしても随分物々しい格好だな。」
「ああこれ。まあ色々面倒を避けたくて・・・ははは。」
「奴らと遭遇したのか?今年もご苦労なことだ。」
皮肉の対象は、チョコレートを用意して出待ちをする彼女らのことなのか、それとも受け取りたくないが為に風邪まで装った自分なのか、恐らく両方なのであろう。とりあえず、何事もなく帰宅したことを釈明しないといけない。安心したのも束の間、後ろめたいことは何も無いはずなのだが、何となく居心地の悪さを感じる。
「今日はちょっと、仕事を片付けたくて1時間早く出たんだ。今朝は寒かったし、まあ、そういうわけで帰りも、すぐ出てきたんだ。」
「ふ~ん、それはお疲れ様。寒くて風邪を引いたら困るし、他人にうつすわけにもいかんからな。それと、今日は大門魔がいい仕事をしたのなら、酒でも届けてやらねばならんな。」
「・・・着替えたら手配の電話をするつもりだよ。」
万が一、出勤前に待ち伏せされたら困ると思って一時間早く出たこと、遭遇したら風邪を引いていると言い張ってその場を逃げようと思っていたことは見透かされていたようだ。
マリアの洞察力に恐れを感じながら、でもまあ今年も何とか乗り切れたかなと安堵しながら、楽な部屋着に着替えた。
自意識過剰と思われても困るのだが、次界探索の旅をしている頃から、事あるごとにロココの周囲で聖ウォーマン達が騒ぐのには辟易していたのである。
聖魔和合が成立し、ますます責任ある立場となってからは、ただでさえ多方面からやっかみを受け易い訳で、今日の会議での注意は、正に自分が一番気をつけなければと思っていたのである。魔魂プタゴラトンにはばれていて、しっかり釘を刺されたわけなのだが。
「マリア、今日は予定より早かったんだね。」
「ん、昨日の内にだいぶ片付いてな。・・・できた。サラダと蟹玉は出来合い物で悪いな。春巻きは揚げただけだが、なかなかいける味だぞ。」
「いや、今日はどこか食事にでも行くかと思っていたから、家で食べられて嬉しいよ。」
「今日はその辺の定食屋以外、ほとんど予約で埋まってるんじゃないか?」
マリアは温め終わった蟹玉のラップを外しながら、これはさっきスーパーで買ったものだから味は大したこと無いなどと、今日の献立を説明している。
一口食べて、確かに味は普通だけど、家で食べられるのだから定食屋よりずっといいとロココは思った。そして、明日はマカロニグラタンでも食べたいなあ、などと考えながら細めの春巻きに箸をつけた。
「・・・あれ?」
「どうかしたか?野菜春巻きは次動ネブラで評判の料理屋でテイクアウトしたんだ。美味いだろう。」
「じゃなくて、これ。・・・マリア、もしかして手作り?」
「・・・ああ、それ。まあ、そうだ。チョコ春巻きも意外といけるな。」
「ちゃんとラッピングしてなくて悪いんだけど・・・。」
まさかこのような形でチョコを貰えるとは思っておらず、慌ててそう言って出したのが白いバラの花束。
「・・・。」
「あれ?白いバラだ。どうしたんだろう・・・、マリア白は好き?これでもいいかな?」
本人は赤いバラを出すつもりだったのだろう。そう言いながらもう一度バラを出してみると、・・・また白だった。
マリアは白い花を見つめている。その様子を見て、真っ赤なバラよりも似合うかもしれないとロココは思った。
「チョコレート春巻き美味しかったよ。ありがとう。・・・白い方がマリアには似合うね。」
「・・・ありがとう。」
マリアはチラッとロココを見上げて小さく礼を言い、白バラの花束を抱えて洗面所に行ってしまった。
ロココは右手で若干紅潮した頬を隠した。そしてマリアには敵わないなあと呟いたのであった。
-[あとがき]----------------------------------------
当初よりだいぶ長くなってしまいました・・・
次界のバレンタイン事情と、最後のページのロコマリが書きたかっただけなのに・・・
当ブログ内のロココ様は、対マリアのみ敬語じゃなくなります。心を開いているっていう無意識の表れかな?
たぶん、この頃はまだ同棲時代(?)だと思います。もうすぐ結婚するはず。(結婚の概念がBM界にあるか謎ですが・・・)
その辺を含め、脳内の構想(妄想)を纏めておきます(笑)
あと、「ポンプ大帝」になっていますが意図的です。幻神って一時的なものだったと思うので・・・
それに元の格好のほうが可愛いしさ!
えー、以下は各自が贈った花と花言葉です
花言葉はいくつかある内、いいなと思うものをshitoがテキトーにチョイスしています
本人達はきっと花言葉まで考えて贈っていないと思います。(この内何人かは考えていると思いますが・・・)
FROM | TO | 花 | 花言葉 |
ピーター | 珍カーベル | かすみ草 | 清い心 |
男ジャック | メリー天使 | マーガレット | 心に秘めた愛 |
牛若 | 聖スワン | 白い水仙 | 神秘 |
フッド | レスQ天女 | カサブランカ | 純潔 |
一本釣 | オアシス天如 | 赤いチューリップ | 愛の告白 |
アリババ | 明星クィーン | 濃色(赤紫)の菊 | 私を信じて下さい |
ヤマト | クロススター | スイートピー | 永遠の喜び |
照光 | ? | ? | ? |
神帝達 | マリア | ピンクのラナンキュラス | 美しい人格 |
プタゴラトン | ノア | シンビジウム | 高貴な美人 |
ロココ | マリア | 白いバラ | 私はあなたにふさわしい |
<ピーター>
ベルは小さいので、小さい花を選ぶつもりでいたはずです。ラッピングはお手製にしようと決めてました。
花言葉までは考えていなかったと思いますが、たぶん決めるときにポンプに聞いていると思います。
<男ジャック>
元々メリーが好きな花を知っていて、それにしようと最初から決めていたけど、その場に行ったら即決するのが恥ずかしくて、時間がかかってしまったと思われます。
<牛若>
花言葉まで調べた上で、贈る花を事前に決めていたはずです。しかも、ポンプがちゃんと当日その花を持ってくるよう、事前連絡のときにこっそり誘導までしていました。
天然ポンプ君は大声で「牛若の選びそうな花を持ってきた」と言ってしまってますが・・・(笑)
<フッド>
前々から花屋をチェックして決めていたのでしょう。花言葉も念のため確認していたようです。
躊躇いも無く一人さっさと会計まで済ませているのが彼らしいです。
<一本釣>
何あげようかな~と少しは考えていたのですが、事前に調べるまでは至らず、当日自分の知っている花を見つけてそれに決めたのだと思います。
はっきり意識していませんが、自分が気に入ったのだからオアシスも気に入るはずと考える傾向にあります。
<アリババ>
色々迷った挙句、明星と自分にぴったりな花言葉の花束を贈ってしまうのには運命を感じます(笑)
意外と明星の好みなどを覚えていて、一生懸命探すのが彼らしい気がします。
<ヤマト>
一応は考えているけど、女心に関しては途中でどうしたらいいか分らなくなってしまうタイプ。きっとポンプと牛若二人掛かりでアドバイスして、やっと決めることができたのだと思います。
<照光>
・・・相手がわかりませんでした。きっと彼はまだ特定のお相手はいないのでしょう。(ごめん照光!)
出張花屋に顔を出したのは神帝達からマリアに渡す分の為だったのかもしれませんが、たぶんそれ以外にミニブーケを購入していると思います。(お世話になった誰かにあげるのかな・・・)
<神帝達>
マリアは神帝達からちゃんと敬愛されています。きっと食事をご馳走になったり、差し入れをもらったり、餌付けされているのでしょう(笑)
翌日、マリアは執務机に花瓶に生けた花束(実行者は牛若)を見つけ、彼らに用意していたお菓子(クッキーかな?)を渡しに行くのです。
<プタゴラトン>
今回の大穴。いえ、すみません。きっとノア様に花束を贈っているだろうなと思って。
翌日、ノアのところには立派な花束と、日ごろのマリアの様子が綴られたお手紙がとどくのでしょう。
マリアには贈りませんが、ノアに贈ったことを報告するのだと思います。
<ロココ>
対マリアにおいて、最近心境の変化があったのか白いバラが出ました。
マリアは恐らく花言葉を知っていたのでしょう。無意識に白いバラを出したロココに驚き、それも悪くないと思ったようです。
ロココはマリアの機嫌がいい真の理由に気づいていませんが、白いバラが好きらしいという事実のみ、彼の頭にインプットされたようです。
⇒マリア編追加しました