ちく ちく ちく ちく
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ここはオーロラ王神のアトリエ。
部屋の中にはたくさんの生地や糸、ボタンにレースが乱舞している。数人のアシスタントとは別の部屋でオーロラ王神はいつも作業を進める。
今日もオーロラ王神の部屋には小さなお客さまが来ていた。
「飽きない?」
刺繍を続けるオーロラ王神の手元を無言で見つめていた珍カーベル。
話しながらもちょっとも狂わない針の動きを見ながらぷるぷると首を振る。
あっという間に素晴らしい花の刺繍がスカートの裾部分を縁取った。
「オーロラ、貴方って本当に天才ね!こんなに素敵な刺繍、次界中どこを探したって見つけられないわ。貴方の作るお洋服ってどうしてこんなに魅力的なのかしら。」
「ハハハ、お褒めに預かり光栄だよ。」
「冗談なんかじゃないのよ、本当にそう思っているんだから。」
薄桃色の生地にこげ茶のリボンがアクセントになったドレス。レースと刺繍とリボンの配分が絶妙な一品に仕上がっている。
ドレスの生地と同じ色で作った帽子がまた愛らしい。ポイントに薔薇の花をつけ、こちらもドレスと同じリボンを使って縁を取り統一感も出ている。
靴に手袋、バッグも作ってトータルコーディネートの出来上がりだ。
「素敵素敵!なんて可愛いの!どんな女の子がこのドレスを着て踊るのかしら。」
もうすぐシャーマン・カーンの聖誕祭が行われる。
その時に開かれる舞踏会で着るドレスの注文が次界一のお針子であるオーロラ王神に山ほど舞い込んでいた。
オーロラ王神のアトリエで作るものは全てオーダーメイドであり同じデザインは存在しない。着る人のためだけに作られる完全受注の方式をとっている。それ故に料金は通常よりも多少割高だ。それでもオーロラ王神の作るドレスを求める声は後を絶たない。
「ふぅ……さ、次の注文だ。」
「ようやく一着出来上がったのに休憩もしないの?」
「パンク寸前で注文は打ち切ったけど、仮縫いや納期よりも前に一通り完成させないとね。最終チェックにも時間がかかるし。」
「雛あられを食べる時間もないのね。」
「残念だけどね。それに、依頼者の中には要人のお客さまもいるから。早めに仮縫いのスケジュールを決めないといけないんだよ。」
そう言いながら次の依頼主のオーダー票を手に取った。
次は……
「500人目の依頼主は大物だな。」
「誰々?誰が注文してきたの?」
「それは教えられないよ、顧客情報だからね。」
「えーつまらなーい。」
「ベルも手伝ってくれると嬉しいんだけどな。」
「……いいの?私とっても不器用だし、迷惑になっちゃうんじゃないかしら。」
遠慮がちに珍カーベルは言う。確かに彼女は手先が器用ではない。このアトリエで働くことは正直に言って無理だろう。
しかしオーロラ王神は優しく微笑んで見せた。
「この部屋、僕が仕事しっぱなしですごく散らかっているんだ。だから、僕が使いたい材料をベルが探してくれると助かるんだけどなぁ。」
そう言うと、珍カーベルは満面の笑みを浮かべて頷いた。
そのぐらいなら器用不器用は関係ない。忙しいアトリエでの仕事を手伝うことが出来そうだ。
「500人目の依頼主は夜空とキラキラ星をイメージしたドレスをお望みだ。右の棚に闇色のビロード生地があるはずだから探してくれる?」
-[あとがき]----------------------------------------
Amuの中でオーロラ王神は凄腕のお針子さんです。
もう魔法みたいに素敵なドレスやお洋服を作り出しちゃいます。技術も◎デザインも◎女の子の憧れる安心のオーロラブランドです!
シャーマン・カーンの聖誕祭は勝手に作りました。てへ。
来月4月8日はお釈迦様の誕生日である花祭りですからね。
これをshitoが認めるかどうかわかりませんので現状Amuの個人設定です。
Amuはshitoと基本的に設定を共有するつもりなので、採用されると嬉しいのですがどうでしょう?
今回は500のキリ番ということでちょっぴり頑張りました。
まぁ家に帰ってから急遽考えたお話なんですけどね。でも『ドレス』とか出てくるとボルテージ上がるのはAmuだけでしょうか?なんかフンガーって興奮しません??
ガンバレオーロラ王神!
500人目のピのつく大物依頼者は色々こだわりがあって煩そうだぞ・笑