「それ、とてもキレイね!」
ピーターがお土産に持ってきてくれたのは色彩豊かな和紙の数々。
どれ一つとして同じ色や柄がない、手漉きの和紙。
触ってみると、少し柔らかいようなそれでいてざらついているような不思議な感じがした。
「でもピーターが和紙なんて、何だか変な組み合わせ」
「変ということはないだろう?俺は芸術文化担当なんだから」
「……どんな関係があるの?」
「和紙は立派な文化さ。七越で開催中の和紙展、俺の担当なんだ」
なるほど、そう言われれば。
状況視察のついでに購入したのだろう。
ピーターは芸術に目がない。
「さ、始めようか」
言うなり、自分は赤系の和紙を物色し、私に青系の和紙をよこしてきた。
テーブルの上にはいつの間にか筆と墨壷まで出されている。
これは、まさか……
「女の子の間で流行ってるんだろ?」
やはり。
「二人で一組にしよう。たくさんあっても仕方ないしね。」
という事は、私が彦人形ピーターが姫人形。
という事は、私が男性の名前を書きピーターが女性の名前を書く。
という事は、という事は……
「ベルは誰の名前を書くの?」
気がつけば既にピーターは名前を書き終わっていたらしく、姫人形の製作に取り掛かっていた。
どうぞ、と言わんばかりにピーターの使い終わった筆を握らされる。
誰の名前を書くのって、それは……
「……願い事は普通人には話さないものよ」
「そうか、それもそうだね」
苦し紛れに吐いたセリフに対して事も無げに切り替えしてくる。
本当に意地悪な人だ。
そう言ってしまった手前堂々と名前を書くことが出来ずに、四苦八苦してようやく出来上がった彦人形。
ピーターの作った姫人形と並べると、自分の不器用さを痛感して情けなくなる。
気が付かれないよう落ち込んでいたところに玄関のチャイムが鳴った。
『お届けもので~す』
玄関にせっせと運び込まれるのはたくさんの桃の花。
あっという間に玄関は桃源郷に早変わりしてしまった。
「ピーターなの!?」
「とても似合うよ、桃の妖精さん」
「彦人形、俺の名前が書いてあるといいなぁ」
本当に本当に意地悪な人だ。
-[あとがき]----------------------------------------
便乗です。
や、なんだかshitoが雛祭りしてたから……(言い訳)
もうそんな行事ずっとやってないしね……(遠い目)
ふふふ……(すきま風)
やっぱりピー君の『俺』には馴染めません。
ずっと藤井先生の『僕』で育ってきちゃったからなぁ。
僕にしちゃおうかなぁ。。。
でも『僕』って言ってる回もあるんだよなぁ。
僕にしちゃおうかなぁ。。。
ピー君は芸術肌なので当然手先は器用です。
何でもそつなくこなせます。
今回の姫人形もそれはもう店先の一番立派なコーナーに並んじゃうような秀逸な作品が出来ました。
ベルはそれはもう可愛らしい妖精さんですが重度の不器用さんです。
家庭科はどんなに頑張っても5段階評価の『3』くらいしかもらえないでしょう。
どんなに頑張っても、ってトコがポイントね。
でもピー君が側にいてくれるならそれもよくなーい?