「マリア様急にどうしたんだろう?」
「わからないですの、でも・・・。」
「きっとマリア様は隣の部屋でこっそり書いてくるのよ、だって折り紙持っていったもの。」
「何だかよくわからないけど、まあ書く気になってもらえてよかったな。」
「本当ですの。これで名前を書いてもらえないなんてロココ様が可哀想ですの。」
((クロススター、何もそこまで言わなくても・・・))
クロススターの台詞にレスQ天女とオアシス天如は顔を見合わせたが、確かに名前を書いてもらえないのはどうなのかと思う。
きっと恥ずかしかったのだろうと三人は納得して、最近見つけたケーキ屋がどうとか、あの店は使える小物がたくさんあるだの話し始めた。
しばらくして、シヴァマリアが筆と硯と墨汁を持って戻ってきた。
「すまんな、探すのに手間取ってしまった。」
「いいえ~、アップルパイお先に頂いていました。」
「これ紅茶とよく合いますの。」
「オレ、アップルパイ大好きなんです。」
「それは良かった。で、さっき言っていた筆と硯なんだが、やり方があってな・・・。」
三人はアップルパイと紅茶を脇に避けて、硯を置くスペースを空けた。
シヴァマリアは、硯に墨汁を入れる時と、筆に墨汁を含ませる時は心を鎮めて行い、相手の名前を書くときに念を込めるのだと説明した。
「これは古くから伝わるまじないの一種でな、こうやって人形を作ると、加護の力が働くのだ。」
そう言ったシヴァマリアの手元にはきちんと折られた姫人形と彦人形があった。
「そう言えば、今日はクロススター達と桃祭りをしたんだって?」
今日の夕食はちらし寿司だったので、それを見て思い出したのだろう。アンドロココは席に着くなりそう話しかけた。
シヴァマリア達はあの後、作った人形を持って次界政務庁近くの小川まで行き、人形を流したのであった。
「まあな、近くの川に流しに行ったら、ちょっと人が集まってしまって焦ったがな。」
お忍びのつもりだったのだが、どこから聞きつけたのか、フラッシュ光后とフォーカス眼鬼が取材に来てあわやハプニングになりかけたのだ。
プタゴラトンと秘書のデビリン族が良いタイミングで割り込んでくれたので、一応大騒ぎにはならずに済んだのだが。
「ははは、それはお疲れ様。」
「まったくだ。今日は色々と大変だった。・・・ところで、お前体調はどうだ?」
「?・・・元気だけど?」
「そうか、ならいいんだ。」
別室に筆を取りに行ったとき、マリアはクロススター達に教えたよりももっと本格的な術を彦人形に施していた。
墨をする水を清め、硯の上で印を切り、呪文を唱えながら墨をすって、名前を書くという念の入れようであった。
(・・・あれだけ厳重にしておけば、おかしな『まじない』にやられることもないだろう。・・・世話の焼ける奴だ。)
嬉しそうにちらし寿司を頬張っているロココを見て、マリアはほっと一息ついた。
-[あとがき]----------------------------------------
ウチのマリア様は結構真面目です。
なので、「これは念のためだから」と自分に言い聞かせて人形に名前を書くことにした。という感じです。
ロココ様は「どうもマリアは自分の名前を書いてくれたらしい。」と思っていてご機嫌です(笑)
ところで、他人の名前を書くって結構勇気要りませんか?特に意中の人の名前は。
意識の問題なんだと思いますが、「名前を書く」ということには何だか力がありそうな気がしたので今回みたいな内容になりました。
理力や魔力がに代表されるように、各キャラ毎に様々な能力があると思うのですが、それって「えいっ」と気合を入れるだけで具現するものじゃないと思うんです。
きっと、力を制御したり、具現化するにはそれなりの手順(ルールや法則)とかがあるんじゃないかと。
だから、マリアはノア様やプタゴラトンに色々と古い魔術の知識を叩き込まれているのではないかと思います。
魔洗礼とかはその集大成なんじゃないかな?
その辺りがいつかちゃんと書けたらな~なんて思うのですが、いつになることやら・・・
まあ、ぼちぼち頑張ります!
以上、あとがきでした~